語用論のまとめ情報

語用論』の解説

語用論(ごようろん、: pragmatics)とは、言語学の一分野で、言語表現とそれを用いる使用者や文脈との関係を研究する分野である。運用論ともいう。

自然言語は一般に、発話された場面によって指示対象が変わる「あなた」「ここ」「明日」などの直示表現(ダイクシス)をもつ。また、例えば「すみません、今何時か分かりますか?」という発話は、形式の上ではyes/no疑問文であるが、意図されている内容は明らかに時刻を教えてほしいという依頼である。これらの現象が語用論の研究対象となる。

語用論は1960年代哲学者ジョン・L・オースティンの発話行為の研究に端を発し、ジョン・サールによる適切性条件議論や、ポール・グライスによる協調の原理の解明によって一定の到達点に達した。その後は、グライスの理論を批判的に継承したディアドリ・ウィルソンダン・スペルベルによる関連性理論と呼ばれる枠組みが展開されている。

語用論は統語論などの研究者から見れば枝葉の研究と見なされがちである一方、実際の使用と切り離して文法意味の理解に至ることはできないという立場をとる研究者もいる。

オースティンの発話行為論

ジョン・L・オースティンは、言語表現が命令・依頼・約束などの機能を果たす側面に注目し、はじめて体系的な議論を行った。オースティンは「命じる」「誓う」のように、それを用いること自体で何らかの行為が実行される動詞遂行動詞と呼び、遂行動詞の用いられていない文について隠れた遂行的機能を明らかにすることを遂行分析として定式化した。オースティンはまた、話すこと自体を発語行為、それによって行われる命令・約束などの行為を発語内行為、それによって間接的に引き起こされる行為を発語媒介行為として区別し、言語表現がもつ発話内行為を引き起こす力を指して発語内効力と呼んだ。

サールの発話行為論

オースティンの研究を継承して発話行為の分析を行ったのがジョン・サールである。サールは、現実の会話において重要なのは真偽ではなくその状況における適切性であるとし、命題内容条件・準備条件・誠実性条件・本質条件の4つからなる適切性条件を提案した。サールによれば、「今何時か判りますか」という発話は、相手が時刻を伝えることが可能であるという適切性条件の成立を確認することで、実際には時間を教えてくれという依頼間接発話行為として機能する。

グライスの協調の原理

ポール・グライスは言語表現が間接的に果たす機能を説明する協調の原理を提案し、今日の語用論の基礎を作り上げた。協調の原理は、次の4つの会話の公理からなる。

  1. 量の公理 - 求められているだけの情報を提供しなければいけない。
  2. 質の公理 - 信じていないことや根拠のないことを言ってはいけない。
  3. 関連性の公理 - 関係のないことを言ってはいけない。
  4. 様式の公理 - 不明確な表現や曖昧なことを言ってはいけない。

これらの公理は、会話の参加者が情報を効果的に伝達しようとしている場合に、守られていると仮定されるものである。例えば、「今いくら持っている?」と聞かれて、実際には1200円持っているにもかかわらず「200円持っている」と答えた場合、論理的には真であるが、質の公理に違反しているために不適切な発話となる。

また例えば、「カラオケ行かない?」と聞いて「明日試験なんだ」と言われた場合、相手が会話に協力的であると考えるならば、関連性の公理に基づいて、試験がカラオケに行けない理由であることが推論される。話し手の発話が会話の公理に沿って解釈できない場合は、会話に協力的でないか、あるいは冗談として見なされる。

ジョフリー・リーチはこれを発展させ、新たに丁寧さの公理を導入して敬語皮肉表現などの分析を行った。

関連性理論

関連性理論ディアドリ・ウィルソンダン・スペルベル1986年に提唱した理論で、グライスの理論では曖昧であった関連性を理論の中心に据え、意図的な情報伝達とは、それが最適な関連性をもつということを伝達するものであるとする理論である。最適な関連性とは、できるだけ少ない労力で最大の情報が得られることを指している。また、表意と呼ばれる「文字通りの意味」と、そこから得られる推意と呼ばれる「言いたいこと」との区別を厳密に定式化している。

語用論の関連分野

一部の形式意味論では文を越えた現象を扱うこともあり、意味論と語用論の境界はそれほど明確ではない。また、認知言語学の立場では、文脈を離れた言語の命題的意味を切り離すことはできないと考えることが多い。また、表現の背後にある意図を読み取ることは、コンピュータによる自然言語理解にとっても究極的な課題の一つである。

また、中間言語語用論というものも存在する。中間言語とは第2言語を習得中の未完成の状態を指す。この第2言語の感覚で語用論を使用するとなると、言語能力には長けているが、

その国の文化背景や言語のルールを知らない為、(例えば、「バッテリーが上がった」は切れたという意味を指すが、意味論では文字通り上に上がると解釈できるため、外国人日本語学習者には感覚のズレが生じる可能性が高い。)意図する内容が違う形で伝達されるものを指す。

例えば、日本語で、「~ください」は場合によっては命令語になる可能性が高いが、敬語が使用されている為、配慮で使ったつもりがかえって命令形に聞こえてしまい誤解を伴う場合を指す。

これを有害な中間言語語用論「有害なプラグマティック・トランスファー」と呼ぶ。これは生駒・志村(1993年論文)で唱えられた名称である。

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中間言語語用論概論―第二言語学習者の語用論的能力の使用・習得・教育

まあまあのコンディションで、不満はありません。 もう少し安ければもっとよかったと思います。

日本人には英語は外国語、でも国によっては第二言語。 ネイティヴの感覚などの違いが分かりやすい。 論文も多く紹介されてますからオススメです。

オーレックス和英辞典 第2版

この辞書は、Planet Board、イデアの泉、How to Say It、英作文のヒント、日本
紹介などのコラムをもうけて英語の発信力強化をはかっている。英文を書くとき、
ついやってしまいそうなミスを避けるための注意が行き届いている。とくに注目す
べきコラムは Planet Board。このコラムは、空く、遊ぶ、ある、などの日本語を
100 ほど取り上げ、その語句を使った日本語の英訳を数種類つくり、その英訳文を
使うかどうかを英米人インフォ-マント100人に聞いた結果を示したもの。

日本語
を英語に機械的に置き換えてはいけないことがよくわかる。たとえば、

「芝生に入るな」 Don’t enter the grass とは言わない。
「いつその会社に入社したのか」 When did you enter the company? はダメ。
「もうすぐ子供が生まれる」 She is going to bear a baby soon とは言わない。
「うそでしょ!」 You must be telling a lie. You must be lying とは言わない。
「ばかなことを言うな」 Don’t say a stupid thing とは言わない。
「上司に叱られちゃった」I was scolded by my boss とは言わない。
「パーティには出席できなかった」I was absent from the party とは言わない。
「どういうご関係ですか」 What is the relationship between you two? はダメ。
「気分転換に散歩してくる」 I’m going out to change my feeling はダメ。
「チャレンジしなさい」 Challenge はダメ。
「レストランは駅前にある」The restaurant is in front of the station はよくない。
「クラブの先輩たちは優しい」Our club’s seniors are friendly はよくない。

いずれも一見よさそうだが、なぜいけないのか、どう言えばよいのかがていねいに
説明されており、ネイティブの考え方がよくわかる。巻頭に索引がついているので、
拾い読みできる。本辞書は英文ライティングに役立つ情報が満載されている。手元
に備えて随時参照したい優れものである。

5つ星のうち 5.0いい。

(参考になった人 5/6 人)

英和、和英辞典を買いたいけれどどれにすればいいかわからないという方には、個人的にはオーレックスがおすすめです。 おそらくジーニアスが一番普及率が高いと思われますが、英語を教えている方でおそらくジーニアスを薦める方はほとんどおられないと思われます。 理由はジーニアスのレビューをご覧いただけるのが一番納得できると思われます。 ジーニアス以外の辞典ではあとは好みの問題ではないかと思われます。 実際に本屋さんに言って、カバーのかっこいい辞典を選ぶのもありです。

5つ星のうち 5.0読んでいて楽しい辞書

(参考になった人 1/2 人)

春なので、辞書を久しぶりに見たところ、発見。 これはいい。 読んでいて楽しい。 楽しいから読める。 理由は、例文が多いことはもちろん、「日本語文の中間表現」「使い分けテーブル」「PLANET BOARD」「How to Say It」があるから。 どう発信すべきか分かる。 なるほど、「まえがき」を見ると、「新しいマーケットを開拓するような辞書をつくりたい」とある。 旺文社の本はどれも「儲け主義」で大嫌いだが、辞書はいい。

日英語対照による英語学概論

5つ星のうち 4.0英語学の概論書に最適

(参考になった人 3/5 人)

言語学の観点からの英語学の概論書。

概論書とは言っても内容的には非常に濃い内容である。

本書だけで十分、院試に対応できると思う。

本書は、日英対照という観点から、音韻論、形態論、統合論、意味論、語用論、英語史というように体系的にまとめられているのが本書の特徴。また、英語学の概論書を売りにしている書籍は多数散見されるが、本書のように日本語と英語の対照(比較)という観点から書かれたものは当時としては画期的なものであったのではないだろうか。


その意味において本書の果たす役割、また既に果たした役割は非常に大きなものだったに違いない。ここに著者のみなさんへ敬意を評したい。

しかし読み進めるに当たって、第一章音韻論は普段私たちがなじみが薄いと思われるので理解するには第一章には労力を要すると思う。
その他の内容は日本語と英語による比較例文が多く例示されているので比較的楽に理解できるものと思う。

また、本書で概論を理解され、さらに興味をもたれた方は、「日英対照による英語学概論」の上にある「英語学シリーズ」を読み進められることをお勧めする。
これらのシリーズは、大学院生を念頭に書かれたものであるため非常に濃い内容を含んでいる。また、二次利用的な方法へ立脚すれば院試対策としても十分に耐えうる内容である。

ただし、結びにこの「日英対照による英語学概論」のマイナス点を挙げておく。それは、本書が初版からすでに10年近くの月日が流れているということである。この点は、改定版が出版されることに期待したいと思う。内容的には☆5つの点数をつけたいが、以上の点を考慮し、評価は☆4つとした。

音声学・統語論・意味論など言語学の主要分野が1冊にまとめられている。 各分野への入門編として使えるし、これ1冊の知識でも院受験に歯が立たないわけでもない。 (但し、得意分野を作るために各分野の専門書を1冊は読んでおいた方がいいだろう) 各セクションに練習問題がついており、自分の実力が試せる。 解答はついてないが、大学附属図書館などにおいてあることも。

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