査読のまとめ情報

査読』の解説

査読(さどく、、ピア・レビュー)とは、研究者仲間や同分野の専門家による評価や検証のことである。研究者学術雑誌に投稿した論文が掲載される前に行われる。研究助成団体に研究費を申請する際のそれも指すことがある。

審査(しんさ、refereeing)とも呼ばれることがある。

概説

Peer reviewとは、仲間(同僚)による評価や、同領域の専門家たちによる判断を指す。

学術論文誌・専門誌においては、寄せられた原稿がすべて掲載されるわけではなく、そこに掲載される前に、原稿が予め同じ分野の専門家(査読者)の評価を受ける過程が入ることがある。この過程が査読である。査読の評価内容によって掲載 / 不掲載が決定されることになる。科学的に評価の高い論文誌の場合、査読者は通常複数の外部の人間が選定され、著者や所属機関との独立性を重視して選ばれる(査読者の選定を参照)。

学術雑誌の出版社や助成団体は、査読を行うことで論文や申請を取捨選択することができ、また論文の著者は公表前に原稿の内容を改善する機会が得られる(プロセス査読を参照)。査読の過程を経て雑誌への掲載が決まることを受理またはアクセプト (accept) といい、却下され掲載が拒否されることを掲載不可またはリジェクト (reject) という。また単純な採否だけでなく、間違い等の修正等を経た上での条件付きの採用となる場合もある(解説例: )。このように専門家が審査することで、スペルミス等の単純なチェックのみならず、専門的知識を要する既存の知見との整合性等もある程度まで調べることができる。査読で全てのミスや不正行為を見抜けるわけではなく、論文の発表後に他グループによる追試等で誤りが見つかる場合もあるが( → 科学における不正行為と査読の限界を参照)、掲載される論文全体の質を高めることはできるとされる。

査読の厳しさは個々の論文誌等によって異なる。また同じ学会が発行する雑誌であっても、雑誌によって異なる場合がある(審査の厳しさを参照)。査読対象となる分野の広さも、個々の論文誌等で異なる。特定分野に特化した論文誌が数多く存在するが、ネイチャーサイエンス誌のように様々な分野を広く扱うものもある。

また(研究助成金の選考など)分野によっては、申請書が同様の過程で吟味され、申請に対して研究費が配分されるかどうかが決定されることがある。

理由

査読を行う根拠としては、個々の研究者や研究グループが自分たちだけで仕事の価値を完全に評価するのは難しい、ということがある。まったく新しい分野やきわめて学際的な内容の仕事を評価できるのは限定された専門家だけであるから、公に発表する前に他人に研究成果を見せ意見を聞くことで誤りを予め見つけ出すことができ、またアドバイスを受けて内容を向上させることができる。

査読を行う側はほぼ完全に匿名であることが多く、かつ独立に行われるため、遠慮のない批評がされ、またコネによる採用を抑制することができる。ただし査読を受ける側に査読者の候補を挙げさせる場合もあるなど、論文誌によってポリシーが異なる(査読者の選定を参照)。

プロセス

一般的な学術雑誌の査読プロセスに関わる人物は、著者()、編集者 (editor)、および査読者 (reviewer、referee、judge) である。

  • 著者: 自分の研究成果を発表したがっている個人またはグループである。なお、ほとんどの雑誌では投稿資格といったものを設けておらず、誰でも投稿できる。
  • 編集者: 雑誌の編集を行っている人物で、商業誌ではたいてい専任者がいる。学会誌では大学教員が兼任していることが多い。
  • 査読者: 著者と同じ分野で研究活動を行っている人物の中から、編集者によって選ばれた人物で、これも大学の教員などが務めることが多い。

以下、一般的な査読プロセスについて概説する。

投稿

著者は、自分の仕事を論文にまとめ、分野・内容の良し悪し・審査の厳しさなどを勘案して、投稿する雑誌を選び、編集部宛に送付する。現在ではほとんどの雑誌が電子投稿を受け付けており、電子投稿に限定している場合もある)。

accept
論文をそのまま受理してよい。
minor revision
若干の修正の必要あり。正しく修正されれば、掲載しても良い。
major revision
大幅な修正の必要あり。著者による修正後、再度査読される。修正後の査読でもmajor revisionになると自動的にrejectされる場合もある)。

採否の決定

編集者は、査読者の意見を元に、原稿を採用するかどうかを決定する。形式上、編集者の権限は独立であって、査読者の意見を受け入れる義務はないが、

たいていの場合は査読者の評価がすべてmajor revision以下であれば掲載拒否になる。あまりに査読者間で評価が分かれていて採否決定が難しいときは、もうひとり別の査読者を選定することもある。

また、内容的には優れているものの、分野的に雑誌内容にそぐわない場合などは、他の雑誌への投稿を勧めることもある。

結果の通知

編集者は、著者に採否を告げる。

採用の場合、通常、査読者のコメントが同時に返却される。たいていの場合、論文は多かれ少なかれ訂正を要求される。著者は示された疑問点・改善点にしたがって、原稿の訂正 (revise) を行い、編集者に返送する。もし訂正が十分でないと再び査読にまわるおそれがあるため、この訂正は慎重に行うべきである。

不採用の場合は、掲載拒否 (reject) を告げる。この場合、査読者のコメントも返却されないことがある。不採用の場合はここでこの雑誌への投稿プロセスは終了であり、著者は他に原稿を採用してくれそうな雑誌を探し再投稿するか、あるいは発表を諦める。

受理

編集者は、著者による訂正が十分なものであると判断したら、著者に受理 (accept) を告げる。これ以降はその論文はほぼ発表したのと同じ価値を持ち、正式な業績にも印刷中 (in press) として書くことができる。

訂正が不十分であると思ったら、原稿は受理されず、再び査読にまわされる。

出版

受理された原稿は、編集者によって誌面用の構成に直され、著者による校正が行われた後、出版される。投稿から出版までの時間は分野により大きく異なり、数週間程度から1年を超えることもあり、雑誌によっては2年近くかかる場合もある。一方で近年は電子化が進んだことを利用して、速報性の観点から素早い査読プロセスを特色とする例や、査読通過後に最終校正が済む前の論文をオンラインで公開する例も見られる。

著者には自分の論文の部分だけを抜き出し、簡単な表紙をつけた別刷り(もしくは抜き刷り)が渡される。有料・無料は雑誌による。別刷りは就職・転職活動時などに同封する場合もあり研究者にとって重要であるが、提出はコピーでよい場合も多い。近年は論文のPDFファイルを著者に無料で送付し、別刷り購入はオプションという場合もある。

匿名性の扱い

匿名性の扱いは、分野・雑誌によって少しずつ異なっている。

査読中は、著者は誰が自分の論文を審査しているか知らされない。ときどき、著者は編集者の名前すら知らされないことがある。

著者と査読者とがお互いに相手の名前を知らない状態で行われる査読方法を、ダブル・ブラインドという。これは、(例えば著者が非常に高名なときなどに)著者の名前で審査が偏らないようにするためである(これに対し、一般的に行われている査読者が著者の名前を知っている場合をシングル・ブラインド法ということがある。どちらにしても、査読者の匿名性は保持される)。ダブル・ブラインドで査読を行う場合、著者は自分が誰だかわかってしまうような参考文献をすべて取り払うように要求される。

ただし、一般的にはダブル・ブラインドはあまり採用されない。これは、いくら編集部が匿名性を維持しようと努力しても、失敗に終わることが多いからである。用いているアプローチ、方法、記述方法などから、同じ研究仲間ならだいたい著者がどのグループであるのか、ときには執筆者が誰なのかまで特定できてしまう。

また、伝統的な「査読者の著者に対する匿名」も、徐々に変わりつつある。いくつかの学術分野では、ほとんどの雑誌が、現在では査読者に匿名を維持するかどうかをたずねるようになっている。論文には、ときに改善点を指摘してくれた査読者への謝辞を名前入りで掲載することもある。

審査の厳しさ

査読の厳しさは、雑誌によって大きく異なる。サイエンスネイチャーのような一流雑誌は、発表に対して非常に厳しい基準を設けており、科学的に高い質を持っていても、該当分野で「画期的な進歩」を感じさせないような仕事では掲載拒否されてしまう。一方、アストロフィジカルジャーナルなどでは、査読は明白な間違いや、不十分なところを除外するためにだけ使用される。このような審査基準の違いは投稿の発表される割合に反映されており、ネイチャーが受け取った論文の5〜10%程度では査読が保証されないが、英文誌のJPSJでは査読が保証される。

査読の問題点

最もよく言われている査読制度への不満は、それが遅く、分野によっては論文を投稿してから印刷されて日の目を見るまで、数か月から数年もかかるということである。実際に天文学などの分野では、新しい結果についての速報は査読誌に発表されず、arXivのような、プレプリントサーバと呼ばれる電子サーバに論文が登録されるようになっている。物理学分野、特に高エネルギー物理学理論においても、まず最初にプレプリントサーバに投稿し、反応を返してきた専門家等との議論を経て推敲を行った後に(あるいは同時に)、査読付き学術雑誌へ投稿するというのが一般的な流れになっている。数学分野においても、かの有名なポアンカレ予想についての証明に関する論文が、プレプリントサーバへの登録という形で発表された。このような方法であれば、最初にその成果を発表した人が誰であるかが一目瞭然であり、査読されている間に研究データやアイデアが盗用されて論文にされてしまうという危険性も少ない。また、プレプリントサーバの論文は誰でも無料で閲覧可能であるので、誰もが内容の正当性をチェックすることができ、革新的なアイデアや結果であればその流布が早まるために、研究の発展も全体として早まり得る。しかし、プレプリントサーバへは日々大量の論文の投稿がなされており、どれが革新的なアイデアで、どれが読むに値するものであるかを判断することはきわめて難しいという短所もある。

一部の科学社会学者は、査読制度においては、エリートや、あるいは個人的な嫉妬によって出版をコントロールできてしまうと主張している。査読者は、意識的・無意識的にかかわらず、自分の意見と逆の結論には非常に批判的になる場合もあるし、反対に自分の関係者には甘い評価をすることもある。たとえ中立的な立場の査読者による査読であっても、ある学術誌では議論が不十分、あるいは論点が誤っているとして掲載拒否されたものが、他の学術雑誌では掲載されることもよくあり、その論文をどう評価するかはやはり査読者によって大きく左右されてしまう部分がある。

同時に、いわゆる「権威のある」科学者は、あまり権威のない人に比べて、有力な雑誌や出版社の査読者として採用されやすい。したがって、エリートの主張に沿った考えは、反動的・革命的なものに比べ、コアジャーナルに載りやすい。この見方はトーマス・クーン科学革命論と一致する。

一方、他の人は、発表できる学術雑誌は非常にたくさんあるので、情報のコントロールは難しいといっている。さらに、査読での意思決定は、それぞれの査読者がばらばらに行っており、他のメンバーと相談したりしないため、上記の事項はそれほど問題ではないと主張する者もいる。しかし、例えばその論文が複数の専門分野にまたがるような内容であったり、または専門家があまり多くはない分野である場合は、査読できる専門家の数が非常に限られ、結果的にごく少数の人間の判断や意見が大きく影響を持ってしまうこともある。この場合、先に述べたようにある雑誌で掲載拒否されたときに別の雑誌に投稿し直した場合でも、同じ査読者に論文の査読が依頼されてしまうこともあり得る。しかし、最終的な決定権は編集者および雑誌の事情に委ねられており、査読者が論文の出版可否を判断する権限を持つわけではない。そのために、同じ査読者が同じコメント(肯定的か否定的かにかかわらず)を提出したとして、それの受け取り方は雑誌により異なっている。

また、当然ながら査読者も人間である。論文の議論の流れを誤解してしまったり、間違った判断をすることもあり、後述するソーカル事件などのように、査読そのものがきちんとなされていなかった事例もある。

査読されなかった論文や査読が行われていなかった専門誌の例

査読制度は近代科学的方法の基盤となるものであるが、いくつか有名な論文は査読されずに発行された。例えば、

  • ジェームズ・ワトソンフランシス・クリックが、1953年にネイチャーに発表したDNAの構造についての論文。この論文は査読にまわされなかった。ジョン・マドックスは、「ワトソンとクリックの論文はネイチャーによって査読されなかった。その論文は審査できなかった。その正しさは自明だった。同じ分野で仕事をしていて(ライナス・ポーリングのことか?)、あの構造を見て黙っていられる審査員なんていなかっただろう。」と言っている)。影響のある物理学者のウィリアム・ローレンス・ブラッグからの「出版」と書かれたカバー・レターを受け取ったときに、編集者たちはこの論文を受理した。
  • アルベルト・アインシュタイン特殊相対論光電効果を含む5本の驚異的な論文が掲載された1905年アナーレン・デア・フュジーク誌()。編集長だったマックス・プランクはこの驚異的なアイデアを出版できる素晴らしさを感じ取り、論文を発行させた。アインシュタインの論文は全く査読に送られなかった。発行の決断は編集長か、あるいは共同編集者のヴィルヘルム・ヴィーンによって排他的に決定された(彼らは後にノーベル物理学賞を受賞しており、査読者としての資格は疑いようもないが)。しかし、その時代には最初の出版の後は著者に大きな裁量を認めるという信念があった。最近ネイチャーに掲載された論説によると、その時代の雑誌では、証明する責任があるのは新しいアイデアの賛同者ではなくてむしろ反対者のほうであった。

査読が適切に行われないことの弊害の例としてソーカル事件が知られている。ニューヨーク大学の物理学教授アラン・ソーカルが、人文科学雑誌のソーシャル・テキスト誌()にいたずらとして無意味な論文を投稿したが、編集者がそれを見破ることができず雑誌に掲載されてしまったため、ポストモダンの研究者の資質やソーカルの行為の是非について各学界に多くの議論を引き起こした。

科学における不正行為と査読の限界

査読は、科学者の手による研究の捏造盗用などの科学における不正行為を見つけるような仕組みにはなっていない。そのため、査読を通過したものの後になって他の研究者によって不正や誤りが判明した事例も多く見られる。

そもそも学術雑誌における査読では、論文が正直に書かれていることを前提としている。加えて通常の場合、査読者は論文の元になった全てのデータにアクセスできるわけではない。そのため論文著者のモラルを信用した上で査読を行わざるを得ず、結果として不正行為を発見できないのだとも言われている。加えて論文の掲載数や引用数(インパクトファクター)が、研究者のその後の将来に影響するようになって以降、論文数が激増する中で果たして適切かつ正確な査読が可能か? という査読によるの役割にも疑問が出ている(後述のアルサブティ事件と藤井善隆の不正事件はその例とも言える)。

どのくらいの不正が発見されているかは明らかにされていない。

査読の限界の事例

  • イラクからヨルダンを経てアメリカに留学していた医師エリアス・アルサブティ (Elias Alsabti) は、テンプル大学ジェファーソン医科大学ボストン大学などを転々とする中で、無名の学術雑誌に掲載されていた論文をそっくりそのまま盗用して他の無名の学術雑誌に投稿するという手段を繰り返した。こうして投稿した論文のうち60数編が実際に掲載され、そのことはアルサブティの業績に箔をつけることになった。結果としてアルサブティの技量の拙さを不審に感じた同僚によって真相が暴かれて、
  • 東邦大学に在籍していた藤井善隆は1991年から2011年にかけて無名の学術雑誌に多くの論文を発表し、そのことによって講師から准教授へと順調に出世したものの、2000年から論文で使われたデータの不自然さが指摘され、2012年に日本麻酔科学会の調査特別委員会によって藤井が発表した論文212本のうち172本にデータ捏造の不正があったとする調査結果を発表。藤井は東邦大を辞職し、日本麻酔科学会からも退会した。
  • ジェネーブ大学のとアメリカジャクソン研究所のピーター・ホッペが、1977年にハツカネズミの体細胞から細胞核移植によってクローン生物を生成することができるとした論文は、生命科学学術雑誌として名高いセル誌に掲載された。しかし、他の実験者による再現実験では成功せず、さらに内部告発からイルメンゼーがデータを故意に操作していたとの指摘があったことから、1981年にジェネーブ大学が、イルメンゼーの一連の研究は「捏造とは断定できないものの信頼性に重大な疑問が残る」という調査結果を発表。イルメンゼーは、その後大学の職を辞することとなった。
  • フランス通俗科学番組の司会者をしていたイゴール・ボグダノフとグリシュカ・ボグダノフ兄弟は、1991年から2002年にかけてビッグバン宇宙論に関する論文を専門学術誌に掲載した(その中には査読制度のある専門誌もあった)。しかしボグダノフ兄弟は物理学の専門的な教育を経たわけではなく(修士課程まで応用数学専攻)、物理学者の多くが兄弟の論文の内容のでたらめぶりを批判した。(ボグダノフ事件)。
  • 黄禹錫(ファン・ウソク)ソウル大学教授が、査読を経てサイエンス誌に2004年および2005年に相次いで発表したヒトES細胞に関する論文は、後にまったくの捏造であったことが判明した。

査読とソフトウェアの進歩

様々な種類の査読が、「ソフトウェア検査」と呼ばれるような形式的で厳密なアプローチを含む、様々な種類のソフトウェア開発の過程で行われている。オープンソース運動において、査読のようなものがコンピューターソフトウェアの作製と評価に使われ始めた。この流れの中で、査読に対する理論的根拠は、いわゆるリーヌスの法則―「目玉の数さえ十分あれば、どんなバグも深刻ではない」―と同じである。つまり、十分に査読者がいれば全部の問題は簡単に解決できるということである。エリック・レイモンドは、ソフトウェア開発における査読制について、例えば「伽藍とバザール」などのエッセイ中で印象的に記述している。

脚注

出典

参考文献

  • 酒井聡樹『これから論文を書く若者のために』共立出版、2002年 ISBN 4320005643
  • アラン・ソーカルジャン・ブリクモン田崎晴明他訳『「知」の欺瞞―ポストモダン思想における科学の濫用』岩波書店、2000年 ISBN 978-4000056786 新版 2012年 ISBN 978-4006002619
  • エリック・S・レイモンド、山形浩生訳『伽藍とバザール』プロジェクト杉田玄白正式参加作品 USP研究所、2010年 ISBN 978-4904807026
  • 酒井シヅ『科学の罠―過失と不正の科学史』工作舎、1990年 ISBN 4875021682
  • 山崎茂明『科学者の不正行為―捏造・偽造・盗用』丸善、2002年 ISBN 4621070215
  • カール・E・ウィガース、大久保雅一監訳『ピアレビュー―高品質ソフトウェア開発のために』日経BP社、2004年 ISBN 489100388X

査読』に 関連する人気アイテム

査読者が教える 医学論文のための研究デザインと統計解析

臨床研究の計画から、統計解析、論文執筆までの手引き。
基礎研究でなく臨床研究に特化した内容で、統計解析も数学的な理論よりもエッセンスを理解することを重視している。(わけのわからん数式は出ません)
「難解な理屈を完璧に理解しようとして行動しないより、理屈はまずは大雑把でも少しでも行動する方がずっといい。実践こそ最大の練習」ってことでしょうか。
あくまで入門書ではありますが、statisticsというよりmethodologyを解説した本書はとても稀有な存在で、臨床研究をやり慣れた人でも読む価値があると思います。



「当院における◯◯の△例」のようなclinical questionがない研究(For what?)とか、学会発表だけで論文にしない研究とか(Why?)の次元から一歩進んで、実臨床に少しでも還元できるような研究活動をしましょう、と言ってくれているように感じます。

データ収集とデータクリーニング、研究計画書の作成など、研究を始める前にきちんと考えるべきことが分かりやすく書かれています。 学位審査で聞かれたことも、こういう背景だったのだと改めて分かりました。 もっと早く出して欲しかった!

写真やイラスト、図表などがとても豊富でした。 特にイラストが可愛く、非常にわかりやすかったです!初めての論文作成で戸惑っていましたが、この本を読んで医学論文の書き方のコツが少しつかめたような気がします。

臨床研究立ち上げから英語論文発表まで最速最短で行うための極意

5つ星のうち 1.0自己充足的予言

(参考になった人 7/10 人)

他科の医師です。
大学院は行かず、もっぱら市中病院勤務で臨床研究で論文を書いていました。
縁あって留学し留学先でも臨床研究をしています。

内容としては心構え的なところが多く、他の方も述べていますが、4000円近い金額に釣り合う内容とは思えませんでした。
康永先生や木下先生の著書の方が安価で、内容も充実しています。

良いメンターは「ギブアンドテイク」ではなくて「ギブアンドギブ」の精神を持ち合わせていることが多いと著者は記載されています。

読んだ感想として、少なくとも著者に関しては「ギブアンドギブ」という精神を感じることは私にはできませんでした。

著者は無料統計environmentであるRの有用性や、傾向スコアマッチングについて述べており、それ自身は大変同意できる内容です。
巻末に著者自身の作成による「 臨床医のための Rコマンダ ーによる医学統計解析マニュア ル」について記載していますが、これは4000円以上と、原資(主として著者の人件費)を考慮すると大変高額です。全く知識がない状態から、Rでプログラミングできるようになるのにはそれなりの時間がかかるので、お金を取りたい気持ちもわかりますが、無料統計ソフトEZR作成者の神田先生、EZRを用いた傾向スコアマッチングについて大変分かりやすい動画を無料で公開されている著者の同僚の新谷先生らと比較すると、商売っ気がありすぎる気がしてしまいます。SPSSならいくらするとか書いていますが、上記を参考にネットで調べれば利用者本人の人件費以外はほぼ無料です。(なお同ページからリンクが張られている「時間のない方必見!効率的に英語力を身に付けるための処方箋」は1500円します。この本の英語の項目の内容と大同小異とすれば、信じられない値段設定です)

また著者は1章を割いて、臨床研究を開始するにあたって遭遇する可能性がある「抵抗勢力」および「共著問題」について書いています。帯にも書いてあるのでこの本の売りになるのでしょうか。そして共著問題は「内容に関する共著者間のコンセンサス」と「(不当な)Authorshipの問題」があると書いています。

著者は、所属する組織 ・ 施設によっては10の 努力で1しか前進しないということもザラにあり、指導してきた医師の多くも、このような圧力を乗り越 えてきたと記載しています。私自身も嫉妬交じりの多少意地が悪いことを言われたり、共著者がなかなか返事をくれなかったりということは経験があります。それでも幸いにして多くの上司や同僚は協力してくれることが多かったと思います。

私は著者のサポート案件での共著問題は「自己充足的予言」である可能性も考えられると感じました。つまり「著者らへのサポート依頼が共著問題を招いた/面倒にした」ということです。著者は、自身が代表幹事を務める臨床研究学会の協力を得た際はAcknowledgementにその旨を記載し、著者を論文の共著者に入れることを条件とし、さらには可能な限り最終決定権を含めて委任し、実際に共著に関して問題が発生した際には、「我々の研究内容に賛同して共著として入るか、それとも賛同せずに共著から外れるか3日以内にどちらか判断して返事をするように、3日以内に返答がない場合は共著から外れるとのコメントを添えて連絡する」としています。
「学会への協力依頼」で学会名をAcknowledgementに入れるのは当然です。そして、研究内容に関して、個人的に欠くべからざる貢献をしたら、その個人が共著者になる権利は当然あると思います。しかしその場合の窓口が「学会への協力要請」という形をとるのはフェアではないと思います。具体的なやり取りを知らない上司からすれば、部下が論文を書くのにどこかの学会に依頼したところ、サポートの条件として代表幹事が共著にいれろと言ってきたと聞いたら、それこそauthorshipを不当に要求してきたと感じるのではないでしょうか。それ以下のコメントは事実上「著者個人への絶対的決定権の委譲(個人的authorshipというrewardも含めて)」ということで、むしろ著者のいう共著問題をややこしくすると思います。

著者は「事なかれ主義を美徳とする日本社会では私のように強く出られない人の方が多いが、そんな頑張った人が損をする日本の現状に風穴をあけるために」などと述べています。共著者から返事がないことは、今の留学先の施設でもよくあります。その理由は、意見の相違の場合もありますが、ほとんどは多忙のためだと思います。チームで共用している対処用のテンプレートがあり、日時を指定し催促するところは同じですが、最後は「修正点等の意見がありましたら、他の共著者の先生方も参照できるように、お手数ですが「全員へ返信」でお願いいたします。特になければ返信は不要です。そのまま先生を『共著者に入れて』上記日時で投稿させていただきます。」となっています。

内容から言えば1点は厳しすぎる気もしましたが、他の評価があまりにも絶賛ばかりなのであえて書かせていただきました。

国内での学会発表・和文論文作成までは、上司の指導を仰ぎながら達成出来たのですが、いざ英文論文作成となると一気にハードルが上がります。
そして英文論文の指導をあおいでみても実際に英文論文作成の経験が少ない上司であったり、そこまでの時間的余裕を割いていただけなかったりすることが多く、自力で筆をとってみるものの、英作文以前の問題がたくさん出てきます。
「そもそもこの研究デザインで大丈夫なのか?」
「統計の手法は合っているのだろうか?」
進むべき方向はおろか、枝葉に気を取られ、全然前に進めません。


色々な指南書を手にとって読んではみても、細かいテクニックは書いてあるものの、私が知りたい情報とはなんだか違う気がします

そこで出会ったのが原先生の教科書でした。
先生の「そもそもなぜ臨床研究をする(したい)のか?」という視点から物語のように一気に展開される本著に釘付けになり、一気に最後まで読んでしまいました。
読み切ることでいきなり論文をかけるようになるわけではないのですが、進むべき方向に光を照らし、行き詰まった時にページを開くと、熱い言葉でそっと背中を押してくれる名著だと思います。
私のように、英文論文作成の経験のない若手医師に強く推薦したいと思います。

5つ星のうち 5.0普通にいい入門書

(参考になった人 3/3 人)

賛否両論あるみたいですが、普通にいい入門書だと思います。
内容が薄いと思う人もいるようですが、それは読みやすい入門書であろうとするとどうしても避けがたいところではないかなと。翻訳のテキストとかだと読みづらいし、隙間時間に読めないような重厚な専門書だと初心者にはとっつきづらいし。当たり前のことばかりが書かれている気もしますが、研究初めての先生にはそれは当たり前ではないので、当たり前のことを明快な言葉で書いている点が評価できると思います。
若手向け入門セミナーみたいなのを聞きに行くと、どこかの会社のひも付きでもない限り、かなりいいお値段するので、研究に興味のある若手の先生はまずこういった入門書から初めて行けばいいんじゃないですかね。現場で一から指導できればいいんでしょうが、研究経験のある指導者が若手に色々説明してあげられるような余裕のある現場は少ないと思うんで。

社会科学系のための「優秀論文」作成術―プロの学術論文から卒論まで

将棋や囲碁、柔道や剣道、テニスやバスケ、どれもこれも定石や型が存在する。それを確実にマスターするのが上達の早道であり、それを拒絶する者はその競技を続けていくことはできない。

本書は社会科学論文の<型>を紹介した本である。著者によれば、日本においては、理系の分野では論文の型が標準化されているけど、社会科学(経済学や心理学を除く)の分野では論文の型が曖昧で体系化されていない。

著者は次のような型を示し、順々に解説していく。

//////////////////////////

A:査読論文・博士論文向け

●演繹主義的アプローチ

①研究不足な重要仮説を検証
②疑わしい有力か説を検証
③論争に参加
④当然視されている前提の検証
⑤文献の盲点を検討
⑥越境型問題発見法

●機能主義的アプローチ

①異例発見法
②事例間ギャップ法

B:修士論文向け

概念対象型(査読論文・博士論文向けの①④⑤の応用系)
論争参加型(査読論文・博士論文向けの③と同様)
「古い仮説・新しいデータ」型

C:卒業論文向け

「古い仮説・新しいデータ」型

////////////////////////

文章の型(文章と文章をどう接続していくか、パラグラフとパラグラフをどうつないでいくか)のパターンについては、『論文の書き方』『論文のレトリック』(講談社学術文庫、沢田 昭夫 )なんかに書いてある。しかし、論文の型のパターンについて書かれた邦語書籍は本書ぐらいしかない。そういう意味で本書は貴重な、貴重な本である。

研究計画書を書こうと思ったら、文法的に正しい文章を書くこと、文章の型を使いこなせることに加えて、論文の型を頭の中に入れておかないといけない。これから卒論を書こうと思っている人、これから修士論文を書こうと思っている人には、理解できない所が多くて難しく感じるだろう。しかし、分かる所だけ読み、論文を書きながら読み直すといい。絶対にもとはとれる!

自然科学系の論文作成に長年携わってきたが、学際的議論や査読要請が増えたので参照した。 社会科学系の議論らしい表現作法や注意点が記述されていて、若い方には有益です。 他分野での作法に慣れてしまった方には、読むのに忍耐が必要。 「論文」の作成目的は、「投稿論文の受諾(アクセプト)」にあるのではなく、論文の主張を通して見通しを良くし・世の中を良くするためで、そのための表現作法・枠組みだと思うのだが、・・・。

社会科学論文の「型」と「論文」攻略法を解説。 博士論文は査読論文の習作、修士論文は博士論文の習作、そして卒業論文は修士論文の習作という点が印象に残った。 一読だけで、すべてを理解することは、なかなか難しい面があり、その都度参照する必要があるように感じます。 ただ、学術論文への確かな道案内にはなると思います。

働きながらでも博士号はとれる

本書は、複写機メーカーに勤務する傍ら社会人学生として慶應義塾大学
大学院システムデザイン・マネジメント研究科を修了され、博士号を取得
された著者が、ご自身の経験に基づいて働きながら博士号取得を目指す方
のために、ご自身の経験に基づきながら指南した本である。

本書6章構成になっていて、第1章では社会人として勤務を持ちながらで
も博士号が取得であることや、博士号取得のメリット等をまとめることで
本書の前提を作っている。第2章は博士課程入学までのプロセス、第3章
は博士課程入学後の研究活動についてまとめられている。

そして第4章で
は、博士課程修了のための非常に大きな関門といえる、学会誌への査読
論文投稿や査読プロセスについて書かれている。第5章では博士論文を
修了するための最後の関門である公聴会や論文執筆等について書かれ、
最後の第6章は博士号取得後のご自身の転職や生活の変化について書か
れている。

非常に読みやすく書かれていて、数時間程度で読破が可能である。査読
論文を通すためにアブストラクト、緒言、まとめが特に重要であること、
指導教授と月に一回程度は面談を持つこと、博士論文では不要な要素を
削ぎ落して読みやすい論文に仕上げること等、著者のご経験に基づいた
貴重な助言が有難い。

社会人学生として大学院博士課程を考えていらっしゃる方が博士課程を
鳥瞰図として知ったり、入学前の準備を整えるための準備をしたりする
ための本はそれほど多くないと思います。本書は、そういった方に有用
な本となると思います。

著者は、以前メーカーに勤務しながら博士号を4年かけて取得し、取得後にスキルを活かした転職を果たした方である。 本書は、社会人博士を漠然と考えはじめた人が、博士号取得までの道のりをざっくり、それなりに体系的に把握するのに役立つだろう。 特定の分野を前提にしていないのでより多くの人が読める一方、それだけ広く浅い内容である。 筆者自身のリアルなエピソードが乏しく、個人的には物足りなかったが、それは巷のいろんなブログを読んで楽しむほうがよいかもしれない。

博士号取得を検討している方におすすめです。 資格取得に共通するプロセスをわかりやすく紹介してあり、大変参考になりました。

査読』の解説 by はてなキーワード

(peer review?、ピア・レビュー?

研究者仲間や同分野の専門家による評価や検証のこと。研究者が学術雑誌に投稿した論文が掲載される前に行われる。研究助成団体に研究費を申請する際のそれも指すことがある。 審査(refereeing?レフェリング)とも呼ばれることがある。

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