トランプ大統領のまとめ情報

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世界から格差がなくならない本当の理由

本書は、
「金曜プレミアム『池上彰・緊急スペシャル!』」(2016年12月16日放送)の内容から構成し、
編集・加筆したものです。

まず、日本での格差について軽く触れ、
米国で富裕層だけの都市が続々誕生していることを伝えます。
ピケティのr>gの視点から、ウォール街へ。
グローバリゼーションの視点から、ウォルマートがやって来た街、中国縫製工場へ。
富裕層の奪い合いという視点から、シンガポール、タックスヘイブンへ。


そして、最後は、日本での格差となります。

分かりやすい文章で、複数の視点から格差の現場を伝えてくれる良書です。
経済が苦手な方でも、スラスラ読めて理解できると思います。
番組の画像や地図・グラフなどが多く掲載されてあり、
通常の新書と比べると1冊の情報量は落ちるので「☆-1」させてもらいました。

以下、個人的感想。

私が、関心を持ったのは、
ジョージア州・フルトン郡で、金持ち居住区が市として独立する話です。
特に、ジョンズクリーク市・市長のスピーチが凄い。
「私は自分たちが素晴らしいと信じています。
特別なものは特別な人たちによってつくられます。そして皆さんは特別です。
私たちの市は特別以外の何物でもないことを証明しましょう」(本書・P41)
また、市民は、自分の払う税金は、自分のために使って欲しいと考えているようです。
一方、フルトン郡では、金持ち居住区の独立により税収が減少。
これまでの行政サービスが受けられなくなってきてます。

自己愛の人が、弱い立場を放ったらかしにする話は、テキサス州パリであったような気が・・・
「自分の払う税金は、自分のために」という人にとっては、「税金は鏡」なのかな?
もっと言えば、「お金は鏡」? 「鏡よ、鏡」ならぬ「お金よ、お金」かな?
・・・なんて考えたりもします。

それと、「まえがき」について。
ゴルバチョフ氏が、日本を「世界で最も成功した社会主義国」(P3)と称したことについては、
小泉信三氏の「社会主義とは、体系化された嫉妬の情である。」という言葉も、
合わせて考えたいものです。

寄付の文化が根付くアメリカでも、格差が酷いようです。
必要なのは、複眼的思考で性悪説に基づいた制度設計をしていくことではないのでしょうか?

さすが池上彰さん!!説明の導入、展開が絶妙、しかも分かりやすい!!これは特筆すべきことです。
本書では、先ず誰もが予想しなかったトランプ氏の大統領当選からお話を持ってきています。
その当選の陰には、白人の貧困層の投票があったということから、
富の偏在のお話を持ってきます。
また、アメリカでは金持ちだけの都市が続々とできていることをはさんで、
そこで富の偏在はなぜ起こるのか、ということで、トマ・ピケティのr>g の公式を持ち出します。
さらに、タックス・ヘイブン・・・例のパナマ文書事件です・・・、
そして、東西冷戦の終了・・・ソ連の崩壊・・・後の英米主導のグローバリゼーションが、富の偏在に輪をかけたということで、
日本の貧困にお話を持ってきて、それを解決するのは、子供への教育への投資ではないか、という結論になります。


少し文句をつけるとすれば、これは池上さんのTV番組の台本を、そのまま本にしたのではないか、ということです。
さらに、トランプ氏の当選には、隠れトランプの存在が、かなり大きいのではないかとも指摘されています。
また、教育への投資ですが、これも「言ってはいけない残酷すぎる真実」(橘玲)を読んでいる人には、
そうなのかなとかなり疑問符のつく内容です。
しかし、最大の汚点は、アメリカであれほど取材をしたのに、トランプ氏の大統領当選を外したことなのではないでしょうか!
すみません、少し悪口を言いすぎました!!個人的には、池上さんのお話は、分かりやすく素晴らしいと思っています。

5つ星のうち 3.0平凡な内容です。

(参考になった人 4/8 人)

「世界から格差がなくならない本当の理由」を池上彰さんなりの切り口で語ってくれると思ったのですが、最後付け足しの様に「(格差をなくすためには)どんな子供もスタートは同じにする」と、それまでの説明からは飛躍した池上彰さんの感想が述べられていました。 それなら最初から、その線を軸に話を進めていけば、いい悪いは別にして作者の考えが伝わったと思うのですが…。 ニュースを注意深く見れば分かる本文も含めて、ちょっと残念です。

ヒルビリー・エレジー~アメリカの繁栄から取り残された白人たち~

製造業が衰退し、工場の海外移転によって職を失った人が貧困化してしまい経済格差が広がった、
貧困化した人々は生活も退廃し、成功を夢見ることや努力をすることを放棄してしまい自分の貧困を他人のせいにして、自堕落な生活をしドラッグや犯罪に手を染めるようになった。それは貧困層がトランプ政権を支持する理由にもつながっている。
でも家族や親戚との絆や愛情があり応援してくれる人がいる、成功する見本があればその社会から抜け出すことができる。
もし、本書を表面的に読んだだけであったなら、こうしたありきたりで皆様も聞き飽きた格差社会論にちょっとだけ感動できる余地のある立身出世の事例があるだけの退屈な本となってしまうでしょう。


しかし、本書に書かれている祖父母、母、著者の三世代にわたる人生を先入観なしに読むことにより、豊かになっていくアメリカの生活と、その成長に伴って増して人々が持つ価値観や倫理観のズレに対しての苦悩や葛藤の姿を見ることができます。

米国でも日本でも、経済の急成長する時期は人々の生活を急速に豊かに、便利にしていきます。日々の食糧に困ることや一日中家事労働や肉体労働に追われることはなくなり、都心のオフィスや工場で科学的に管理された仕事をし、広くて衛生的な家に住み、栄養のある食事を食べ、子供に高度な教育を受けさせる。自分たちの親世代の人々から見れば夢のような生活を送ることが現実となり、町も人も活気づく明るい時代となります。
しかし、光があれば影もできるように、豊かで便利な生活はかつての人々が大切にしてきた、貧しくとも聖書や儒教の教えを守り、日々の平和やささやかな幸運に感謝しながらつつましく勤勉に暮らすこと、隣人同士、家族同士で助け合うことの必要性を薄れさせていきます。より豊かな生活のためには、次々と生まれる商品に買い替え、新たなレジャーを経験すること、そして隣人や同僚よりもよりたくさんの給料を稼ぐことが求められ、そうでなければ欠乏や劣等感、嫉妬を味わうことになります。結果として人々は物欲に支配され、利己的、個人主義的となり、孤独感や虚無感を感じざるを得なくなり、その穴埋めとして享楽的、刹那的な娯楽を求めるようになります。
それは著者の祖父母や母の生きた時代であり、彼らは豊かさの一方で他社との葛藤、享楽的な生活を楽しむ人々に巻き込まれ苦しんでいます。
しかし、そんな生活に虚しさを感じても、後戻りをすれば時代に取り残されてしまう。しかし1987年に映画、ウォール街でゴードン・ゲッコーが言い放った「強欲はすばらしいことだ(Greed is Good)」というセリフで自分の良心や懐疑を見て見ぬふりをして、あるいはそのセリフに疑問さえ抱くことはなく、より強欲に、より豪華絢爛になれば幸せになれるのだと信じて突き進んでいきます。

そのような価値観は一見、アメリカや日本のような先進国の富を増やすことに貢献してきましたが、欠乏感や嫉妬などを喚起して人々の心を空洞化させていくことで成立つ繁栄はやがて地盤沈下を起こすことになります。職業倫理や誇りの欠けた金を持っているだけの「成功者」や社会的に必要で意義のある仕事であっても給与が安いというだけで軽蔑される職業の評価基準は多くの若い中産階級、労働者階級の人々から労働意欲や将来への見通しを奪い、富裕層の誇りや文化に伴う社会貢献への意識を無意味なものにしていき、結果として貧富の差にかかわらず、将来へ何かを残すことを考えにくい社会、自分に誇りをもつことの価値がない社会を生み出すこととなりました。その代表例が本書の主題となるヒルビリーたちの生きざまといえます。
著者自身は貧困生活から抜け出したいと願い海兵隊に入隊し、ロースクールへの入学を経て弁護士となるいわゆる立身出世を果たし、ホワイトカラーの生活様式や言動を取り入れるべく奮闘している一方で、海兵隊員、弁護士という仕事は彼にとって決して幼いころから望んだ仕事ではなく、ただ貧乏暮らしから抜け出したいがために選択した職業であり、おそらくは金持ちになりさえすれば幸せになれるのだという価値観が染みついてしまっていることがうかがい知れます。
現代においては、それでもいいではないか、金があればある程度は幸せになれるのだから、という意見がほとんどでしょう。しかし、その価値観の集積が多くの先進国の人々、特に国の繁栄次第で豊かにも貧しくもなってしまう中産階級の人々を緩やかに縛り付け、物質的な豊かさがなければ不幸になるという不安を常に抱かせ続け、やがては国そのものも衰退させてしまうのだという現実が本書には描かれています。

無名の一市民の自伝であり、トランプ政権誕生がなければ日本では話題にもならなかっただろう。私もトランプ大統領の堅固な支持層がどういう人々なのかを知りたくて、遅ればせながら読んだ。その甲斐はあったと言える。
著者の視点はけっこう入り組んでいる。自分のことを棚に上げ、何かというと政府が悪いと自らのひどい境遇の原因を責任転嫁する姿勢には批判の目を向ける。しかし一方で、懸命に努力しているのに、生活保護を受けながら自分たちより恵まれた生活をしている人たちがいることに怒るところに深い理解を示す(なぜトランプ支持層があれほどオバマケアを憎むのかがよくわかる)。

コミュニティの力を信用しているのか、そのコミュニティこそが貧困の固定化の原因になっていると考えているのか、ストーリーとしてはわかりにくいかもしれない。しかしプロパガンダにならない冷静さは本書の良さだと思う。
私はもう30年くらい前に、本書の舞台の一つになっているケンタッキー州をドライブ旅行したことがある。沿道の小さな街で経験したさまざまなことは、未だに忘れられない。本書により個人的にはそれらの体験の背景を知ることになった。アメリカ映画やドラマの背景にも今までより理解が及ぶし、テレビコメンテーターたちの薄っぺらなトランプ批判には疑問を抱く。

書名は忘れてしまったが、レーガン大統領時代、その政策の余波を受けて職を失った人物が、南米の左翼政権をレーガンが攻撃しているというだけで支持していることを読んだことがある。おそらく本書の“ヒルビリー”たちの多くも、先の人物と同じで、自分の現状の“根本的な要因”を見つけられないのだろうなと思った。それは著者も書くように、その人自身の責任もある。といっても、著者はいわゆる“勝ち組”なので、どれほどの人が耳を傾けてくれるのか、微妙だろう。
アメリカの統治者は、“白人貧困層”を分断の便利な道具として使い続けるだろう。

そういった意味では、本格的なシステムの改善などあり得ない。それが嫌なら、能力のある人物は個人的に脱出するしかなく、能力も運もない人物は、これまでとは全く違うタイプの政治家を選ぶしかないのだろう。最低でも、メディアや現在の統治者にのせられることなく、“根本的な要因”に目を向ける程度のことをしなければ、「エレジ-」を無限に歌い続けるしかない。

ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く

2016年の大統領選の前に、およそ日本の識者、コメンテーター、ジャーナリストといわれる人のなかで「トランプだ」と明快に言い切っていたのは木村太郎くらいだろう(自分調べ)。彼が何かの番組でトランプの勝利を予測し、その根拠を聞かれると、アメリカ中をまわってみたらわかる、と自信たっぷりに言っていたのを思い出す。本書の著者も1年を14州で150人のトランプ支持者の声を拾った。彼が実際に見たアメリカの没落するミドルクラス(白人ワーキングクラス)の姿は、そのまま『ヒルビリーエレジー』の風景と重なる。彼らが求めるのはほどこしではなくフェアネス。

親の世代、自分の世代、子の世代と、みな同じように真面目に働いているのにどんどん暮らし向きは悪くなるばかり。不法移民をはじめとする「マイノリティ」には救済の手が差し伸べられるのに、自分たちの声は政治家に届かない。彼らは政治家の描くバラ色の未来を聴きたいのではなく、自分たちの不満や不安を代弁する声を求めていた。ヒラリーの演説会場とトランプの演説会場の熱量の差はそれを本人なり参謀なりが見極められていたかの差だろう。

トランプはこの白人ワーキングクラスの心の声を最大のレバレッジとして利用した。本書の第7章に、トランプがクリントンとの討論会の前に支持者にアンケートをとり、「支持者が聞きたがっていること」を入念に調べたと書かれている。トランプはおそらくそのアンケートの結果に忠実にしたがってスピーチを組み立てたのだろう。他の演説会においても同様の「顧客サービス」を行っていたと思われる。トランプのスピーチを聴いた支持者たちの反応がそれを物語っている。

「国境は抜け穴ばかり。これまでの政治家は見てみぬふり。トランプがやっと一大争点にしてくれた」(ルイジアナ州ニューオーリンズの支持者)。
「オレたちが思ってきたことを、一気に大統領選のテーマにしてくれた。それだけでもトランプに感謝している」(オハイオ州ヤングスタウンの支持者)。

トランプに公約を実行する能力なり手腕なりがあるのか、というところはいま大きな疑問符がついているが、それでもかつてアメリカの反映をささえた白人ワーキングクラスの声なき声を代弁し、彼らの不満を「政治的アジェンダに載せた」ことを支持者たちは評価した。トランプはウソもつくし差別的な発言もするし品もない。しかし、彼の他にわれわれの声を代弁してくれる人はいないではないか、と。本書の7章の「リチャード・ローティの警告」が的を射すぎていてそら恐ろしい気さえする。1970年代以降、アメリカの左派(リベラル)は、グローバル化による賃金の下落、雇用の喪失でジリ貧になっていったワーキングクラスの問題に取り組むことなく「『中道』と呼ばれる不毛の真空地帯に移ることにより生き延び」ることを優先し、ヒラリー・クリントンに代表されるようなエスタブリッシュメントに“成り下がった”ことをローティは批判した。そして、怒れるミドルクラスは自分たちを代弁してくれる左派以外の「有力者」を探すだろうと予言したのである。

ただ、左派にだけ責任を押し付けるわけにもいかない。ミドルクラス没落は単純な因果関係で説明も解決もできない入り組んだ問題だ。たとえば本書第7章の「スキルギャップ」の話はその象徴ともいえよう。労働者は「仕事がなくなった」と嘆く一方で、経営者は「必要な技能を持ち合わせた働き手がいない」と洩らす。いくらトランプの一声で製造拠点をアメリカに戻したとしても、アメリカで付加価値を生みだせるような製造業が必要とする人材は、高度な教育と訓練を受けた者に限られる。『ヒルビリー・エレジー』にもあったように、製造業の海外流出とともに衰退した地域ではもともと大学以上の教育に対しての関心が薄い(大学に行かなくても稼げる仕事につくことができ、快適な暮らしを送ることができた)ところに、教育費の高騰があいまって、大学は「行っても役に立たないし、そもそも行くのは無理」なところになってしまった。

全世界で1998年から2008年の10年間に、どの所得層の人がもっとも実質所得が伸びたのかを示す有名な「象グラフ」(元世銀エコノミストのブランコ・ミラノビッチが作ったもの)からわかるのは、新興国の中流層と世界の超富裕層の上昇率がもっとも高く、先進国の中流層の上昇率の所得はほとんど増えなかったということだ。新興国の中流層は増えた所得を教育にまわし、先進国の中流層は生活水準をこれ以上落とさないために教育への投資を減らさざるを得ないこんな構図も見えてくる。これが保護主義や減税で一気に解決できるような簡単な問題ではないことは誰にでもわかる。トランプは、彼の支持者を救済することはおそらくできないだろう。実際に就任半年で公約は何も実現されておらずほとんどが後退しているといってもいい。だが彼の支持者が失望しているように見えないのは、トランプだけが「そこに問題がある」ことを知らしめたことに対する評価だろう。

それにしても、単身ラストベルトに飛び込み、これだけ核心に迫った取材を日本人するのは容易ではなかっただろう。都市部で知識人や現地の主要メディアから情報をとるだけでは、これほど正確なトランプ支持者の分析はできなかっただろう。現に冒頭に書いたとおり、日本のメディア人で「トランプが勝つ」と公言していたのは木村太郎くらいだったわけだから。旅費や記事の掲載先について保証されているからこそこれだけの取材ができたのではないだろうか。スノーデンが情報をリークしたのはいずれも活字オールドメディア、つまり新聞だったが、こういう粘り腰の取材を可能にするインフラというのは今後どこが担っていくのか。そんなことも考えさせられた。

トランプが大統領になってから9ヶ月、もはやその存在に驚くことはなくなったが、就任確実となった当時の衝撃は忘れられない。誰もが話題だけの泡沫候補と思っていながら、トランプ本人は着実に支持をのばし、共和党代表、そして実際にアメリカ合衆国大統領となったのだった。我々日本人、もしくは日本人になじみのあるアメリカの大都市から眺めると不思議な現象であったが、アメリカの周辺部に生きる人たち(そして周辺部の状況を知る人たち)にとっては、当然の結果であったのだ。

グローバル資本主義がもたらす当然の帰結として、産業の空洞化が起きることはよく言われることだ。

日本においても多くの企業が工場を海外移転して、そこで働く工員たちが転職を余儀なくされてきた。それは、アメリカでも同じだ。しかし、アメリカでは日本とは違う要素がもう一つある。移民、である。工場が海外移転するとともに、少なくなる仕事すら、労働力の安い移民に奪われる。結果として、それまで普通に働いていれば家も買えて車も買えてバカンスで家族旅行に行けたアメリカのミドルクラスが、没落していったのである。

このような状況に、かつて繁栄を享受した高齢世代、そのしわ寄せを受けている中年世代、そして希望をなくした若年世代が、かつての強いアメリカを標榜するトランプを支持したのである。これはある意味で、日本で起きていることと同じであろう。かつての好景気を憂う団塊世代、親世代と同様の賃金上昇を得られない中年世代となった就職氷河期世代、そして年金不安や超高齢化社会に怯える若年世代。しかし、繰り返すが、アメリカでは日本と違う要素がもう一つある。移民、である。日本の若年世代は、労働人口が減少する中で仕事そのものを奪われることはない(高賃金かどうかは別として)。中年世代、高齢世代も同様だろう。労働力不足に悩む小売業や外食産業は、これらの世代を獲得することをすでに考え始めている。しかしアメリカは違う。安い労働力が国境を越えて流入しつづけ、そして安い労働力を目指して資本が流出しつづけるので、アメリカ人の不安・不満が消えることは、ないのだ。

このアメリカ人の不安・不満に目をつけて煽動して支持を上げたのがトランプだ。安い労働力である外国・移民を否定することにより(つまりアメリカ・ファースト)、彼らの積もりに積もった鬱憤をはらしたのだ。しかし没落するミドルクラスを「代表する」トランプが、「代表される」没落するミドルクラスを満足させるような政策を実行できるかは、大統領就任後9ヶ月たった今でも未知数である。そもそも経済、安全保障、環境問題が複雑に国家間で絡み合っている現在、「アメリカ・ファースト」を実践することが、「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」を実現できるかどうかすら不明である。それは、トランプ政権が終わったときに何がレガシーとして残されているか、で判断するしかない。

我々がこの現象から学び取るべき教訓は、格差が広がれば広がるほど、政治はポピュリズムに流されやすくなるということだろう。そしてポピュリズムに流されれば流されるほど、より国内の分断が深まるという悪循環であろう。

本書は、トランプ大統領の就任という、外野から見れば驚くべき出来事を実現したミドルクラスの不満・不安を、現地取材にこだわって徹底的に掘り下げた秀逸なルポルタージュである。本書を読めば、トランプの勝利は、ある意味で当たり前のことが当たり前に起きた、ということがわかるであろう。そしてアメリカ社会の深い分断に、驚きを隠せないであろう。アメリカの現在を知る上でも、必読の一冊である。

「2015~2016年のアメリカ大統領選の取材は、わからないことの連続(p.i)」だったという朝日新聞記者が、約1年間、「ラストベルト」と「アパラチア地方」を中心に「14州で約150人の支持者にインタビュー(p.208)」したルポルタージュ。
著者によれば、トランプ支持者は「オバマの『チェンジ』に期待した元民主党支持者、失業中の人、薬物の蔓延に怯える人、複数の仕事をかけもちする人、まじめに働いても暮らしが一向に楽にならないことに不安を覚える人」など「多くは、明日の暮らしや子どもの将来を心配する、勤勉なアメリカ人だった(p.ii)」という。


このようなインタビューを通じて著者が得た結論は、第7章の考察で知ることができるが、その考察自体はそれほど目新しいものではない。本書の魅力はやはり、考察の材料となったルポの部分のリアリティだろう。
「トランプを選ぶなんて、アメリカ人(の約半分)はいったい何を考えているんだ?」と感じている人にオススメである。
また、「民主主義の危機」の「最大の前兆」として生まれる、反民主主義的な政治家の特徴としてアメリカの研究者が示す「①暴力を明確に否定しない姿勢、②政敵の市民的自由を制限する姿勢、③選出された政府の正当性の否定の3つの基準(p.225)」はトランプに限らず日本など多くの国で参考になりそうだ。

トランプ大統領』by Google Search

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